精緻な構築美から生まれる圧倒的なドラマ性がパスピエの大きな魅力のひとつだと“ヨアケマエ”を聴いて改めて感じた。歌メロというわけでもないのに猛烈に口ずさみたくなるピアノリフ、着実にリスナーの心拍数の上昇を導いているドラム、しなやかに鳴り響きながら曲に熱を与えるベース、鍵盤とスリリングな駆け引きを繰り広げながら随所で華麗なフレーズを煌めかせるギター。そんな楽器隊が生み出すサウンドの真っ只中で、艶やかなのに無邪気、堂々としているのに飄々としてもいるという稀有なあの歌声が鳴り響く……という素敵な音同士の結合がここには広がっている。パスピエ節に繋がる大事なスパイスとも言うべきどこか和を感じるメロディ、昨年末の武道館公演という大舞台を経てさらに力強く進もうとする姿勢を謎かけ風味の中にさり気なく織り込んだような歌詞の言葉の数々も印象的だ。他の何にも似ず、特定のシーンに属することもないまま、着実にたくさんのリスナーの心を捉えてきた彼らの粋なファイティングポーズが見えるこの曲。2016年のパスピエも面白くなりそうだ。(田中大)