歌こそが生命線

レディオヘッド『ア・ムーン・シェイプト・プール』
レディオヘッド ア・ムーン・シェイプト・プール
発売日にハイレゾ音源をダウンロードして聴く。24bit/48kHzという意外な低スペック。当然24bit/96kHz以上の高ビット・レート音源で来ると思っていたので、これは予想外だった。もちろん録音機材の制約とかそういう問題ではない。彼ら自身があえて24bit/48kHzを選択したのだ。『キッド A』にみられたキレキレの電子音が鼓膜を引き裂くようなワイド・レンジなハイファイ音響ではない。かといってストリングスなど生楽器を駆使した広がりのある音場表現でもない。どちらかといえば中低域に音が凝縮したような音。しかし音の実在感は凄くてゴツゴツとした歯ごたえがある。電子音と生音が交錯する込み入ったアレンジのバックで歌うトムのヴォーカルがくっきり浮かび上がってくる。彼らの狙いはそこだ。高ビット・レートの音だと広がりが出る代わりに密度が薄くなってしまうことがあるので、こういう実在感のある音にはなりにくいのだ。実際、この音の密度はハンパない。音が上下左右に詰まっていて息苦しいほど。そこから浮かび上がってくる研ぎ澄まされたメロディとハーモニーは、聴き手にピリリとした緊張感を与える。トムの声の力をひしひしと感じる。オーケストラと彼が真っ向から対峙する“ザ・ナンバーズ”と、続く繊細なアコギのアルペジオと消え入りそうに儚いトムの声、そして荘厳なコーラスが交錯する“プレゼント・テンス”、反復するピアノをバックに歌う静謐な“トゥルー・ラヴ・ウェイツ”に至るクライマックスは感動的だ。これがライヴでどのように発展し変貌するのか。確かめたい。(小野島大)
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