過去最高の成功(全英10位)を収めた前作『プレゼント・テンス』から2年ぶりとなるニュー・アルバム。ワイルド・ビースツの転換点、新機軸がはっきり聴き取れるし、同時に過去4作の彼らの歩みを振り返れば理にかなった納得の到達点とも言える一枚だ。初期2作ではコントロール不能なエキセントリック・ポップを鳴らしていた彼らが自身の変態性の謎を解明し、ストイックに成形し直してみせたのが3作目の『スマザー』であり、その形をよりポップに洗練させたのが前作だった。そこから次はどうするのかとなった時、再び自分たちの成形前の本能を呼び覚ます道を選択した本作は、今後5年の彼らの音楽の自由度を考えた場合に正しい。本能と言っても単なるロウ&ラフの先祖返りにはならない。彼らにはバンド名に似合わず先天的な「品の良さ」みたいなものがあるが、シンセの積極的導入でさらにそれを流れるように美しいフォルムへと磨き上げてきた彼らが、ここではエッジの効いたギターとドラムスによって野味溢れるニュアンスを加えている。美しいというよりセクシーな音、生々しい息づかいと肌触りを感じさせる。(粉川しの)