ピアノの流麗な響きとともに静寂も激情も呼び起こしては、「愛」という普遍的かつ果てしないテーマに立ち向かう“Swan”。ストリングスとバンドが一体になりながら大きな弧を描き、大合唱必至の荘厳たるクライマックスを導く“Nawe, Nawe”。これまでは渇望感のまま、「こんなもんじゃねえ」と叫ぶかのように音数や展開を増やしている印象があったが、この2曲がそういう温度感ではないことは一聴すればわかるだろう。野心をぶつけるというよりも広く空間を包みこむ歌としての2曲。昨年末の幕張メッセでのワンマン以来、「この曲をどう響かせたいか」というビジョンがより明確になったのだと予測できるが、そうなったときに、各楽器の旋律がどんどんシンプルになっている。それは、削ぎ落としたあとに残るバンドの軸にあたる部分やメロディの強さを信じているからできる技であろう。だからこのシングル、変化・進化というより開花・覚醒と呼ぶ方が正しい。今の彼らが打つ革新的一手は、ひとつのやり方に安住することも飛び級することも避けながら、着実に活動してきた歴史に基づいている。（蜂須賀ちなみ）