米ライノによる80年代UK勢リマスター（デペッシュ、ザ・スミス）はニュー・オーダーにも及んできたが、本作は2005年に発表されたシングル・コンピの新装版。オリジナル作は音質や収録ミックスのチョイス他テクニカルな問題が多くファンの間では不評だったそうで、今回は名エンジニア：フランク・アークライトをマスタリングに迎え、収録トラックにも微調整が加えられている。

彼らの数あるコンピの中でも最も評価が高く、編集盤ながら「古典」と看做されている『サブスタンス』は12インチ集（+B面）で、対する『シングルズ』は7インチが主眼。ファクトリーが12インチ偏向レーベルだったことを思えば逆に本作はレア度が高い「マニア向け」と言えるが、短いエディットを詰め込んだ全32曲はヴォリュームたっぷりで、手っ取り早く代表曲を網羅したい若いファンにアピールしそう。明瞭かつパンチが効いたサウンドにしても―好き／嫌いは分かれるだろうが―現代の耳にフィットすると思う。オリジナル・アルバムを辿るのとはまた異なる、NOシングル曲のパラレル・ワールドに足を踏み入れるきっかけとして。（坂本麻里子）