ニュー・オーダー、29年ぶりの単独来日公演を速報レポート

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ニュー・アルバム『ミュージック・コンプリート』を昨年9月にリリースしたニュー・オーダーが、昨日5月25日、東京・新木場スタジオコーストでおよそ29年ぶりに単独来日公演を行った。

RO69では、完全ソールドアウトとなった同公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【ニュー・オーダー @ 新木場スタジオコースト】

1987年の2度目の来日以来、単独来日としては実に29年ぶりのステージとなったのが今回のニュー・オーダーだ。その間に彼らは2001年、2005年のフジ、そしてフッキー脱退&ジリアン復帰後の初ステージとなった2012年のサマソニでも来日している。だから、1980年代の2度の単独来日には間に合わなかった世代でも、2000年代以降のどこかのタイミングで1度はニュー・オーダーのライヴを観ているという人も多いんじゃないだろうか。

筆者もまさにそのパターンで、3度のフェス来日を経てこれが4回目のニュー・オーダー体験だった。そしてこれは嬉しい驚きの私的結論でもあるのだが、これまでのどの公演よりも今回の単独は遥かに素晴らしい内容だった。喩えるならば「初めてニュー・オーダーを100%体験できた」、そういう興奮と感動があったのだ。そしてその興奮と感動の原動力となったのは、間違いなく新作『ミュージック・コンプリート』そのもの、完全体のニュー・オーダーを彼ら自身が奪還したこの新作にこそあると感じられたライヴだった。

オープニングの“Singularity”は『ミュージック・コンプリート』におけるニュー・オーダー・サウンドの復活を象徴するナンバーで、まさに現在の彼らの幕開けに相応しい1曲。シンセ&ベース&ドラムのコンビネーションからなるダンス・ビートにギターとヴォーカルのメランコリーが乗るという、ニュー・オーダーの定型中の定型なサウンドだが、ビートが思いっきり硬質でジリアンのキーボードの鳴りもかなりハード。『ミュージック・コンプリート』に感じられるアグレッシヴなモードはこの日のライヴの全編に影響していたと思う。

続く“Regret”はイントロのギター、あのバーニーの一撃と呼ぶべきストロークに一瞬でヤラれた人も多かったんじゃないか。まさに鮮烈、“Singularity”の憂鬱なビートを突き破るようなそれにうわーっ!と胸が昂り熱くなるのを感じる。そんな冒頭の2曲から“Crystal”、“Restless”あたりまでは新旧のポピュラーな歌物アンセムを畳み掛けていく構成だ。「今プレイしたのは“Restless”、ニュー・アルバムからの曲だ。でも、次にやるのはすごく古い曲だよ」とバーニーが言って“1963”へ。この日のセットは新作『ミュージック・コンプリート』からのナンバーが最多なのは当然として、80年代半ばのナンバーもかなりの存在感だった。『サブスタンス』でニュー・オーダーを初体験したようなアラフォー世代にはぐっとくるセットだったのではないか。

ショウのムードが一変したのが“Tutti Frutti”だ。これまでのポップなアンセムを単発で聴かせていく流れから一転、クラブ、レイヴっぽいシームレスなダンス・モードに突入していく。“People on the High Line”は超絶ファンキーなベースとエスノでフリーキーなリズムを叩ききるスティーヴンのドラムが最高で、激しく点滅するストロボライト、フロアに向けて交錯していくレーザーの演出も猛烈に格好良い!! ライヴハウスの密室で観るニュー・オーダーの醍醐味を噛み締める瞬間だ。でもってバーニーは意外なほど軽やかなステップでダンスしている!

“Bizarre Love Triangle”なんてまさにニュー・オーダーが現在のEDMブームに叩き付ける挑戦状のようなパフォーマンスで、下から腹を突き上げられるドラムマシン×シンセのアタックに、フロアからは何度も何度もどよめきのような歓声が上がる。ここまでギッチギチに超満員になったコーストも本当に久しぶりに体験したが、30〜50代をメイン層とする私たちオーディエンスの青春をきっちり拾い上げつつも、2016年の切っ先に立つ闘志もひしひしと感じられるという、この中盤のダンス・セットはそんな現在のニュー・オーダーの完全体の在り方を示すものになっていた。

思い返せば、2001年の彼らはとりわけロック色の強いアルバム『ゲット・レディー』のタイミングでの来日だったし、2005年も同路線を引き継ぐ『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』、もっと言えばフッキーの影響力を強く感じた来日だった。そして前回2012年はバーニーたちとフッキーの確執が最悪の状況に陥っていた中での来日だった。つまり過去3回の来日には常になにがしかのバイアスが存在していて、どれも素晴らしいライヴには違いなかったが、同時に「これはニュー・オーダーの一側面なのだろう」という感覚があった。それに対して、今回の彼らはニュー・オーダーの基準値に立ち戻ったと言うか、『ミュージック・コンプリート』によってニュー・オーダーのど真ん中、王道を取り戻した自信と正しさの中でプレイしていて、それが「ニュー・オーダーのすべてをついに観た!」という感動と興奮を生んだのだろうと思う。新作の中でもとりわけハードな“Plastic”は、クラフト・ワークと『エクスターミネーター』期のプライマル・スクリームのちょうど真ん中で鳴っている、みたいなテクノ・サウンドが最高だ。

そしてほとんど反則技だったのが“The Perfect Kiss”、“True Faith”、“Temptation”の本編ラストの3連発!! 初っ端の“Regret”のギター・イントロで胸撃ち抜かれて以降、何度も何度も「もうダメだー!」という瞬間があったのだが、この3連発はさすがに耐えきれず涙が噴出。涙腺が決壊したのはどうも私だけではなかったようで、波打つフロア、絶え間ない歓声と合唱と怒号、集団の祝祭と個人の感傷がミックスされた数千人分の熱が渦巻いて、会場のカタルシスもとんでもないレヴェルに達していた。いやほんとに、“Temptation”でミラーボールが回り始めた瞬間の昂りは制御不能なものがあった。

アンコールの1曲目は待ってましたの“Blue Monday”。しかしドラムマシン×ベースの長大イントロは懐メロとはほど遠いガツガツしたダンスの現場感覚の賜物で、良い意味で想像していたのと違うものになっていた。バーニーとジリアンが寄り添いながらキーボードを連弾する様もぐっとくる。現在のモードで再解釈し直されたクラシック・ソングの強さ、という意味では、続く“Love Will Tear Us Apart”もまさにそういうものだった。バーニーはジョイ・ディヴィジョンとイアン・カーティスに絶大なリスペクトと思慕、そして少量のコンプレックスを持ち続けている人だが、この日の彼のプレイは吹っ切れていた。イアンの写真、そして「Joy Division Forever」の文字が大写しになる中、ほとんどポジティヴと言ってしまってもいいほど力強く、アッパーな新たなニュー・オーダーのための“Love Will Tear Us Apart”を生み出していく。オールラストを『ミュージック・コンプリート』のエンディング曲にして思いっきりリリカルで若々しいメロディが跳ねる“Superheated”で締めくくる演出も最高だ。

「ありがとう東京、君らはほんとにファンタスティックなオーディエンスだ」と何度も繰り返していたバーニーだけど、私たちがファンタスティックなオーディエンスだったのは当たり前なのだ。だって、本当に、本当にファンタスティックなライヴだったのだから!27日の追加公演を行こうかどうしようか迷っているあなた、未だ間に合います。ぜったいに、ぜったいに観ておくべきです!約2時間の今回のステージがあなたにとって最高のニュー・オーダー体験となるだろうことを保証します。(粉川しの)

〈SETLIST〉
01. Singularity *
02. Regret
03. Academic *
04. Crystal
05. Restless *
06. 1963
07. Your Silent Face
08. Tutti Frutti *
09. People On The High Line *
10. Bizarre Love Triangle
11. Waiting For The Sirens' Call
12. Plastic *
13. The Perfect Kiss
14. True Faith
15. Temptation

En1. Blue Monday
En2. Love Will Tear Us Apart
En3. Superheated *
*最新作『ミュージック・コンプリート』収録曲

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なお、ニュー・オーダーはこの後、5月27日(金)に東京で追加公演を行う。

公演の詳細は以下の通り。

●ライヴ情報
<追加公演>
2016年5月27日(金)東京 新木場STUDIO COAST
OPEN 17:30 / START 18:30
TICKET 1Fスタンディング¥10,000 (税込/別途1ドリンク)
2F指定席¥14,000(税込/別途1ドリンク)|バルコニースタンディング¥14,000(税込/別途1ドリンク)
※未就学児入場不可
<問>クリエイティブマン:03-3499-6669
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