たぶん今も大勢いるであろう、ディランの膨大な作品、アルバム群を前にして、どう聴いていったらいいもんかと悩む人への素晴らしいプレゼントだ。50年間の活動、オリジナル・アルバムだけで30枚以上、ヒットや代表曲、重要曲を挙げていったらキリがない人を、ざっくりと2枚組35曲で俯瞰して見せた編集盤。コンピの大きな基準は、ノーベル賞騒ぎを一つのきっかけに彼の音楽に触れてみようという人が対象だが、単に入門的に並べたり、編年体で揃えたみたいな味気なさはまったく無く、曲のピックアップや流れに気持ちが込められている。もちろん「あの曲が入ってない」的な思いが無いと言えばウソになるが、それはここでは問題にすべきことじゃない。
どうしても60~70年代の曲が中心となるのは仕方ないけれど、巧みに各ディスクの後半に新しめのものも入れ、ディランという人の創作者としての流れと今を伝えてくれているし、中川五郎氏による「この一行とこのひと言」といったガイドも気が利いている。ストリーミングで機械的にリストアップされるものとは違う、日本チームならではの心のこもったノーベル文学賞祝賀盤。(大鷹俊一)