迷路を抜けた先の景色
Nothing's Carved In Stone『Existence』
発売中
発売中
ALBUM
Nothing's Carved In Stoneといえば、やっぱり超個性的+超技巧的なメンバー4人によるスリリングなサウンドバトルが武器。毎回アルバムともなれば、1枚でお腹いっぱいになる密度の濃さが魅力だった。ところが今作『Existence』はなんだか風味が違う。緻密に練られたアレンジ、バンドアンサンブルはもちろん不動なのだが、それぞれの音の間に「隙」がある。ギターとボーカルだけで幕をあける“Overflowing”から、シンプルな構成が優しい“華やぐ街に向かう君”、ベースソロからのギターソロがゾクゾクする“Sing”、そしてトドメは村松拓(Vo・G)の弾き語りから始まる“Adventures”。4人が少しずつお互いの距離を広げ、それぞれのプレイを感じて活かしながら味を足したり、時に引いて見守ったりしているような風通しの良さがある。そしてその「隙」が生むグル―ヴがたまらなく心地好く、むしろ距離が広がった分、そこにメンバー同士の信頼関係やバンドへの愛情が詰まっているよう。前作『MAZE』=迷路を抜けた先にあったのは、最高に開けた新境地だった。まだまだこのバンド、進化する。(後藤寛子)