「ポップ」の悲劇を問う一枚

ザ・ウィークエンド『スターボーイ』
発売中
ALBUM
ザ・ウィークエンド スターボーイ
ブルーノ・マーズに続いてザ・ウィークエンドまでもが80~90年代のブラック・コンテンポラリーを意識したアルバムを届けてきたのは、彼も「非アメリカ黒人である」というアイデンティティを逆手に取ろうとしているからだろうか。キャッチーさで言えば大ヒットの前作を凌ぎ、既に本国カナダや米国ではチャートのトップを記録している『スターボーイ』。その官能的かつ妖艶なソウル歌唱を武器に、ポップ・スターとしての内省に向かっている。ダフト・パンクとコラボした2作は本編の冒頭と最後に置かれているだけあって印象深いが、個人的にはラナ・デル・レイの気怠い歌声とデュエットする曲が、アルバムのテーマを語る上でも重要な鍵を握っているように思える。もともとサウンド面においても活動の場においてもオルタナティヴなスタンスをとっていたザ・ウィークエンドが、「メインストリームでの成功と狂騒」に全身全霊をもって立ち向かっているのが実に興味深い。ポップ・スターの苦悩を、歴史の中で何度も繰り返されてきた悲劇として問題提起しているのだ。日本盤にはカイゴによる“スターボーイ”リミックスも収録。(小池宏和)
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