生きているファンタジー

クラーク『デス・ピーク』
発売中
ALBUM
クラーク デス・ピーク
シェフィールド発祥ワープ・レコーズ、設立当初は同地のキャバレー・ヴォルテール周辺に支えられていた。90年代以降にその看板を背負ってきたのはエイフェックス・ツイン、例えばこのクラークはいつまでたっても中堅扱い。そんな見方は、やはり古い。約3年ぶりのオリジナル・アルバムとなるこれを聴いて、今それを最も強烈に象徴してるのは彼、クリス・クラークかもと思えてきた。

バンド形式のロックにせよワープにも多い単身エレクトロニック・アーティストにせよ、その手の音楽に深く入りこむほど、死や狂気に接近しがち。最初アルバム名を見たとき、聴くのがつらいかもと一瞬思った。冒頭曲は“スプリング・バット・ダーク”だし。いや待て“ピーク・マグネティック”ってのもある。ラスト曲“アン・U.K.”ってのは、いわゆるブレグジット以降の時代を体現する? そんなふうに何度も聴きかえした結論を言えば、最高だ。正気に近い深読みとともに、適度な明度の気持ちよさに浸れる。そして電子音自体のスケールの大きさは、ぼくの最近の愛聴盤であるテンプルズのそれに近い。つまり、年寄りっぽさの対極なのだ。(伊藤英嗣)
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