おいしくるメロンパンが奏でる3ピースのアンサンブルは、何ものにも囚われないオルタナティヴな質感と同時に、聴いている自分の感情の形を微塵の狂いもなく具現化されるようなミステリアスなまでの妖力を宿している。「共感」越しのコミュニケーションとは一線を画した、それこそ魔術師と観客の如き緊迫感に裏打ちされた彼らのスタンスは、だからこそ唯一無二のロックとポップアートを鳴らし得ている――前作『thirsty』から9ヶ月ぶりの2ndミニアルバムとなる今作は、まさにその証明と言うべき1枚だ。
拭い難いメランコリアとセンチメントが不穏なマーブル模様を描きながら、風の彼方へ疾駆していくような“桜の木の下には”“look at the sea”のスリル。脳内を駆け巡る少年期の苦悩を《情けないな あの日/裏切ったのは僕の方だった》というラインとめくるめくコードワークに託した“あの秋とスクールデイズ”のセピア色の蒼さ――RO69JACK 2016 for RIJF優勝からわずか1年、驚くほどのスピードでその表現の彩度と強度を高めつつあるおいしくるメロンパンの現在地を告げる進化作。(高橋智樹)
いびつで愛おしい感情の形そのもの
おいしくるメロンパン『indoor』
発売中
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