素晴らしき女相続人

シャルロット・ゲンズブール『レスト』
発売中
シャルロット・ゲンズブール レスト
8年ぶりの新作はエド・バンガーの気鋭セバスチャンとのコラボ。この歳月の間に起きた異父姉ケイトを亡くす体験は父セルジュの思い出に繋がったようで、主にフランス語の歌詞を自ら手がけたよりパーソナルな作品になっている。女優としての活動でも有名なこの人の端正なキャンバスにエール、ジャーヴィス・コッカー、ベックら才人が様々な絵を投影してきたわけだが、本作のシナリオは彼女自身のものと言える。

ウィスパリング・ボイスゆえにこれまで引き算な音作りが多かったが、セバスチャンは容赦なくサウンドとループ、グルーヴを折り重ね時に彼女の声を音の一要素として扱っている。フレンチ・ディスコ流の厚みやサウンド・デザインが過剰になる場面もあるものの、ダフト・パンクのギがプロデュースした⑥はいいクッションになっていて、アーバンなクラブ色は⑪で見事な成果をあげている。そのパワフルな⑪と娘のあどけない歌声を元にしたシークレット・トラックは、悲しみを抜け希望と前進を選んだ彼女の姿を伝えるようだ。1作ごと異なる音世界を探究する、ユニークな道のりをこれからも続けていってほしい。(坂本麻里子)
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