アルバム冒頭“ユー・ベター・プレイ“は、ギターの速弾きフレーズにカウベルに高音シャウト……とハードロック的モチーフがたっぷり。PVは気弱ないじめられっこによる痛快で、ちょっとファンタスティックな復讐劇が描かれていて、しかもキュートなハッピーエンドを迎える内容だ。レッド・ジャンプスーツ・アパラタスの面白さは、このスカッとする明快さ、豪快さにあるのだと思う。まるで印篭をかざすように、桜吹雪をバシッと見せるように、ネガティブなことを追っ払っていく。そんな勧善懲悪的なシンプルな精神がベースになっていて、パワフルなロック・サウンドやバラードで表現されていく。新発明のサウンドじゃないし、笑っちゃうほどの「キメ」があったり大仰な「泣き」もあるんだが、しっかり心を掴んでしまう理由はそこらへんにあるんだろう。デビュー作『ドント・ユー・フェイク・イット』(06年)がミリオン・ヒットとなったのもそれゆえ。そして大きな成功の後に、じっくり時間をかけて磨いたのがこの2ndアルバムだ。迫力のある悲喜劇を観てカタルシスを得るような、重量感たっぷりの仕上がりである。(吉羽さおり)