これは愛のアルバムだ

大森靖子『クソカワPARTY』
2018年07月11日発売
ALBUM
大森靖子 クソカワPARTY
1年4ヶ月ぶりのメジャー4作目。10曲入りの廉価盤「フラッシュプライス盤」(CDのみ)と、それに各々異なる2曲を加えた12曲入りの3種の盤があり、その3種の盤はそれぞれ内容の異なるライブCD、DVD、ブルーレイ、視聴コード等がついてくる。大森は常々、自分のことなんて歌いたくない、人を救うことにしか興味がない、と言っている。このアルバムだってそうだ。安直な連帯や友愛はもたれあいでしかない。もともと独立した個人がひとつになれるはずがなく、しょせん人は孤独に生き孤独に死ぬしかない。きみはきみ自身を生きようよ、と大森はその孤独を抱きしめ、せめてそれが「孤立」にならないように、と歌うのである。聴き手の深奥に突き刺さる言葉、目くるめく喧噪なポップ世界から洪水のように迸り出る凄まじい情報量は、大森という鏡に投影された聴き手自分の自画像でもある。生き急ぐかのようなスピード感が凄まじい。アルバム後半は大森の原点である弾き語りに戻り、《誰かのつくったぼくで生きるのはもう飽きた》と歌われ、アルバムは終わる。その愛と業の深さは感動的ですらある。(小野島大)
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