ほのかに発光するロマンチスト

ホワイト・ライズ『トゥ・ルーズ・マイ・ライフ...』
2009年02月25日発売
ALBUM
ホワイト・ライズ トゥ・ルーズ・マイ・ライフ...
デビュー・アルバムで、1曲目のタイトルが “デス”である。これには参った。で、2曲目が“トゥ・ルーズ・マイ・ライフ”(死に方)で、そして最後は“ザ・プライス・オブ・ラヴ”(愛の価値)でシメている。このタイトルだけ見ても、このバンドがどれだけロマンチストなのかわかるはずだ。自分たちのバイオでも「世の中は愛と死で成り立っている」なんてすごいことを言ってのけながら、まだ二十歳そこそこのホワイト・ライズ。だが彼らがこの1stに込めた賞味期限つきの青さ、死の恐怖と生の悦び、ビタースウィートな愛の告白の数々は、夜空で一生懸命瞬く星のように、私たちの胸をいっぱいにさせる高揚を植えつける。昨夏の日本独自の企画盤EP『アンフィニッシュド・ビジネス』のときよりも飛躍的に増した楽曲のスケール感は、彼らのクールな佇まいとは裏腹にある種の包容力すら纏っていて、“デス”や“プライス・オブ・ラヴ”を聴いたときの、みるみるうちに全身に血液が行きわたるような感覚なんてちょっと鳥肌ものだった。

ジョイ・ディヴィジョンはもちろんエコバニやニック・ケイヴ、インターポールなどを引き合いに出されるそのサウンドは、音だけ聴けばニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクの延長線上にあるエッジーでダークなもの。だがホワイト・ライズにはイアン・カーティスのような閉塞した絶望はない。むしろ今の自分を取り巻く状況から何かを掴み取り、突破口を見つけたいというポジティブな思いが伝わってくる。闇の中でほのかな光がそっと灯ったときのように、その在り方はひたすら美しい。この先が楽しみすぎる新人だ。(林敦子)
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