消えることのないR.E.M.のライブの熱

R.E.M.『R.E.M. アット・ザ・BBC』
発売中
BOX SET
R.E.M. R.E.M. アット・ザ・BBC

いまほどR.E.M.の不在が重く感じられる時代もないのではないだろうか。政治状況は荒れ果て、多くの人間が怒りと憎悪をぶつけ合うなか、もし彼らがいたらどんな音と言葉を届けてくれただろう――どれだけタフな状況にも屈することのなかった彼らの道のりを回顧するだにそう感じられる。「オルタナティブ」というのはメジャーではないということではなく、自分の目で世界を見て、自分の足で歩いていくということだ。

すでにいくつかのベスト盤をリリースしているR.E.M.だが、彼らをつねにバックアップしてきたBBCのコレクション・ボックスである本作は、彼らの存在の大きさを感じるのにある意味最良の内容となっている。R.E.M.の真摯な姿勢はオーディエンスとじっくりと交流するようなライブでこそもっとも発揮されるからだ。なんとCD8枚組+DVDという大ボリュームで、かつ時代は古くは84年から新しいもので04年、規模もスタジオ・セッションからフェスティバルのヘッドライナー・ステージまで様々だが、しなやかな演奏で聴き手をゆっくり鼓舞する様は貫かれている。代表曲を網羅するというよりは、その時代ごとの重要曲がピックアップされている印象で、だからつねにフレッシュなエネルギーに満ちているのもいい。

アコースティックな演奏で親密な空気を作り出す91年のラジオ・セッション。ビル・ベリー脱退後の新たな体制を確かめるような98年のスタジオ・ライブ。瑞々しいパワーが溢れ出るような84年のライブ……どれもその時代ごとのバンドのムードをよく記録しているが、ハイライトは名実ともに世界一のロック・バンドと認知されていた時期の95年におけるライブ・ブロードキャスト、そしてバンド史上どころかフェスティバル史に残る名演だと語り継がれている99年のグラストンベリーでのステージだろう。柔らかさと力強さを自在に行き来するギター・サウンドと、いつもどこかに悲しみと孤独を抱きながらけっして生命力を失わないマイケル・スタイプの歌。ロック・バンドとはこんなにも大きな包容力を持ちうるものかと、鮮烈な感動を覚えずにはいられない。いっぽうでぐっと成熟味が増す04年のライブ放送ではトム・ヨーク参加曲もあり、R.E.M.の存在が次の世代のバンドたちにとっていかに大きかったかを垣間見ることもできる。

ここでは多くの名曲群を懐かしむこともできるが、R.E.M.のライブをたったいま鳴っているものとして味わえることこそ本ボックスの価値だろう。明日を生きるための力が、彼らの歌には宿っている。(木津毅)



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R.E.M.『R.E.M. アット・ザ・BBC』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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R.E.M. R.E.M. アット・ザ・BBC - 『rockin'on』2019年1月号『rockin'on』2019年1月号
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