深化し、成熟を続けるエモの本懐

ゲット・アップ・キッズ『プロブレムズ』
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ゲット・アップ・キッズ プロブレムズ

近年、リバイバルが言われて久しい「エモ」。その機運を促したのが、エモの第2世代にあたるバンドの相次いだ再結成。なかでも最大の寄与者が、アメリカン・フットボールと、そしてこのTGUKだろう。7年ぶりのリリースとなった、再結成後1枚目の前作『ゼア・アー・ルールズ』からさらに8年。本作は通算6枚目のアルバムになる。

原点回帰が謳われた去年のEP『キッカー』から、さらに厚みと推進力を上積みしたバンド・サウンドのダイナミクス。タイトなパンク・チューンから4分台のミッド・テンポまで、緩急を織り交ぜながらもシンガロングなハイライトを押さえた構成は「エモ」の真骨頂であり、TGUKのストロング・スタイルと呼ぶにふさわしい。キーボードやシンセなどのエレクトロニックな要素も効果的に配し、たとえば“ウェイキング・アップ・アローン”ではチップチューン的な耳愉しさを誘うアレンジも披露している。「最近は、僕たちが自然と思いつくアイデアにバリケードを張らないで曲作りをするようにしている」とのマット(Vo/G)の言葉どおり、旺盛な創作意欲が注ぎ込まれた充実の仕上がりだ。

しかし、そうした出音のインパクト、演奏のニュアンスが表情豊かに捉えられている一方、プロダクションはあくまでモダンでクリア。そのあたりについては、ザ・ナショナルインターポールの作品も手がけるプロデューサー、ピーター・カティスの手腕に負うところも大きいのだろう。そこに窺えるある種の成熟さや洗練性は、(思春期的なエモの心象を離れて)ミドル・エイジの訪れについて衒いのない言葉で綴られたリリックともシンクロを見せているようで、興味深い。再結成をへて11年、幾回りも大きく、懐の深さを増したTGUKの姿がここには刻まれている。 (天井潤之介)



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ゲット・アップ・キッズ プロブレムズ - 『rockin'on』2019年6月号『rockin'on』2019年6月号
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