モダン・テクノロジーの伴ったガレージで生み出される“良い加減”のロック

ザ・ブラック・キーズ『“レッツ・ロック”』
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ザ・ブラック・キーズ “レッツ・ロック”

離婚問題を抱えていたダン・オーバックがブルーな気持ちで取り組んだという前作『ターン・ブルー』(全米1位)から5年を経ての第9作。2017年に発表された彼のソロ第2作はわりと大人数で作られていたが、ザ・ブラック・キーズ本体については、彼自身とドラマーのパトリック・カーニーによる“ふたりでできるもん”状態に拍車がかかっているようで、今作における彼ら以外の参加者は2人のアディショナル・シンガーのみ。しかも定番化しつつあったデンジャー・マウスとの共同制作体制ではなく、久しぶりのセルフ・プロデュースにより完成されている。

ここまで読んだだけでも今回もその音楽に大きな変化がないことはお察しいただけるはずだが、実際、ちっとも変わっていない。ガレージという言葉を使うと汗くささや荒々しさを連想されるかもしれないが、彼らの場合には“おたくなガレージ臭”とでもいったものがある。そこは近所迷惑を考えずに大音量でギターやドラムを鳴らせるだけではなく、こだわりの機材や道具も揃った秘密基地。本作が録られたナッシュビルのイージー・アイ・サウンド(ダン所有のスタジオであり、彼は同名のレーベルも運営)は、まさにそんな場所なのだろう。今回もその基地で、スカスカなのに豪快で、ふにゃふにゃなのに力強く、テキトーそうでいて計算の行き届いた音が編まれている。5年前のインタビューでダンは「成功したいとか大きなライブをやりたいとかではなく、レコーディングして何か新しいものを作るということがとにかく好きで、それがバンドを始めた理由だった」と語っているが、そうした根本的動機は今も変わっていないはずだ。

耳をひくギター・リフなどのなかには、例によってロック史からの借用が明らかなものもあり「これの元ネタ何だったっけ?」という謎解きが楽しめたりもする。しかも彼らの場合、それを指摘しても叱られそうな威圧感はなく、むしろウインクでもしてくれそうな、いい意味での気安さがある。そして不思議なことに、最新の音楽に触れているはずなのに、70年代ロック、しかも超有名なハード・ロックの名盤ではなく、シングルでそこそこヒットしたソフト・ロック系の楽曲のコンピレーションでも聴いているかのような気分にさせられる。若い世代には新鮮なものとして受け止められるはずのそうした味わいを存分に楽しむことができるのは、現在40歳のダン、39歳のパトリックよりも年上の人たちかもしれない。というわけで、70年代ロックを背骨に持つ世代にもぜひ手に取って欲しい作品だ。 (増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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ザ・ブラック・キーズ “レッツ・ロック” - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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