昨年のサマーソニックでの公演を、「来年はニュー・アルバムだよ!」とのエド・マクファーレンの言葉で締め括ったフレンドリー・ファイアーズ。あれから1年を経てやっと、名盤『パラ』に続く8年ぶりのサードが届いた。夏の終わりという、彼らにお似合いな季節に。冒頭の“キャント・ウェイト・フォーエヴァー(=永遠に待ってられない)”はタイトルからして、長い空白を反省しているようでもあるが、8年待った価値があるのか否かという不毛な議論はやめておこう。英国セント・オールバンズ出身のトリオの姿勢はブレず、今回もひたすら、やりたい音楽を最高の形で表現するのみ。ほぼ全曲のプロダクションをマーク・ラルフ(イヤーズ&イヤーズほか)に
委ね、4つ打ちリズムでアルバムをブチ抜き、従来以上に踊らせることに特化している。
Adonis Presents Charles Bの名曲“ラック・オブ・ラブ”をカバーし、アシッド・ハウスを軸に据えて、片や90年代ハウスに、他方で80年代のディスコ・ポップにインスピレーションを求めた3人。ただ“踊らせる”だけでなく、メロドラマティックな極上ポップ・ソングを作ることにも相変わらず余念がなく、ある意味で金太郎飴的なのだが、どこを切っても美味! また本作は、歌い手としてのエドの実力を再認識させるアルバムでもある。全体的に抑制を効かせた艶めかしい声は、ジョージ・マイケルを想起させることもしばしば。そして最後まで聴き終えた時、その美声がずっと「Can't Wait Forever」のメッセージを訴え続けていたことに気付くだろう。時間はない、行動を起こして今この時を楽しもう――と。逃避を提供するパーティー・アルバムでありながら、遠くで時計が終焉に向かってカウントダウンしていて、そんな切迫感が2019年の世を映している。 (新谷洋子)
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