スタクロ伝説、第2章の扉が開く

スタークローラー『デヴァウアー・ユー』
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ALBUM
スタークローラー デヴァウアー・ユー

LA出身のアロウ・デ・ワイルド(当時16歳)とその仲間が2015年に結成したスタークローラーは、昨年のデビュー以来、過去のさまざまなロック・イコン(イギー! オジー! クランプス! ゴーゴーズ!などなど)と比較されてきた。確かにスタークローラーの激熱ライブには、最近のメインストリームのロックに欠けがちな「妖しさ」と「危なっかしさ」が充満している。でも、誤解はしないように。彼らは「レトロ」なバンドではない。飲み物に喩えるなら、スタークローラーは「激辛わさび入りタピオカ・ドリンク」である︱スパイス成分は昔ながらだけど、そのポップな佇まいは、紛れもなく2019年の「今」なのだ。

本作『デヴァウアー・ユー』は、そんなスタークローラーのセカンド・アルバムである。新プロデューサーはニック・ローネイ。ポスト・パンク時代から活躍し(PiLの『フラワーズ・オブ・ロマンス』とかね)、近年はヤー・ヤー・ヤーズも手がけた人だ。

ライアン・アダムスが自らプロデュースを買って出た18年のデビュー作『スタークローラー』の制作方針は、「みんなでスタジオに入って、一発録りしてみよう!」という、ある種のパンク・サマーキャンプ的な発想だった。そこが痛快であり、また限界でもあったわけだけど、それと比べ、この2枚目は、一曲一曲がじっくり、丁寧に作り込まれている。ヘヴィなギター・リフ主体の曲作りはこれまで通りだけど、新たなチャレンジにも貪欲で、たとえば“ノー・モア・ペニーズ”は、ストーンズ風味のカントリー・ロック調。それもただの物真似じゃなく、ちゃんとスタークローラーの世界に昇華されている。

アロウのボーカルの表情も、ぐっと豊かになった。ライブ中のアロウは、予測不能な挙動(フェイクの血しぶきとか、いきなりのエビ反りブリッジとか!)で観客の心を鷲づかみにする。でも、本作の彼女は、魂のシャウト(“リジー”)から、呪文にも似た囁き(“ハリウッド・エンディング”)まで、声量を自在にコントロールし、伝えたい物語にリスナーをぐいぐい引きずりこむ。サイコ・ホラー風のイメージが強烈な“シー・ゲッツ・アラウンド”(《私の顔を覆う手/もう逃げられない/“彼女”が忍び込んでくる》)などは、前作では扱えなかったダークなテーマだ。でも、今の彼女はそれを歌い切れる。まだ20歳になったばかりなのに。

いや、もしかしたら、それは20歳の「今」だから歌える歌なのかもしれない。この新作には、そんなスタークローラーの「今」が詰まっている︱わさびもタピオカも、併せて一気にご賞味あれ。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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スタークローラー デヴァウアー・ユー - 『rockin'on』2019年11月号『rockin'on』2019年11月号
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