新たなパンクの雷管、登場!

フォンテインズD.C.『ドグレル』
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ALBUM
フォンテインズD.C. ドグレル

アイルランドはダブリン出身の話題の5人組が遂に日本にお目見え。海外では4月に発表された本デビュー作は軒並み高い評価を受け、英マーキュリー音楽賞にもノミネートされたので気になっていた方もいるだろう。

先輩に当たるガール・バンドはもちろんレーベル・メイトでもあるアイドルズ、あるいは近年のUKインディ・ギター新波=シェイムブラック・ミディらと同様に彼らも音楽的にはポスト・ポスト・パンクに括られる。空間を感じさせるギターの饒舌かつ緻密なツイン・アタックとメロディックなベース、モータリックなビートとの絡みはジョイ・ディヴィジョンを思わせるし、ぶっきらぼうに吐き捨てる個性的な歌いっぷりはマーク・E・スミスとシェイン・マガウアンから棘を抜いて若い頃のリアムの不遜さをまぶしたとでもいうか。都市の片隅にロマンを見出すリリシズムにはジョナサン・ファイアー・イーター/ザ・ウォークメンも思い起こした。もともと詩が好きで結成されたバンドというだけあって、ポエトリー・リーディングにガレージおよびサーフ・ロック~ロックンロールの初期衝動を組み合わせることでこのスタイルに行き着いたのだと思う。ライブ録音された本作はそのプリミティブさを生々しく捉えており、ネオンに照らされた夜の街をどしゃめしゃな勢いで突っ走るごときアルバム前半は息もつかせない(特に③⑤)。文句無しの爆発力。とはいえ切羽詰まった疾走ばかりではなく振れ幅も備えていて、聴かせる美メロから心をリフトアップするポップさ、アイリッシュらしいトラッドなメロディ・センスも後半に登場する。音楽性がこれからどう変化・成長するか非常に楽しみなバンドだが、まずはこの稲妻のように鮮烈な第一投を受け止めて欲しい。(坂本麻里子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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フォンテインズD.C. ドグレル - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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