ヤング、ギフテッド&グレー

モーゼス・サムニー『グレー』
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ALBUM
モーゼス・サムニー グレー

インディ/オルタナティブのメインストリームへの頭脳流失は、ボン・イヴェールジェイムス・ブレイクブラッド・オレンジといった新型越境アクトをクローズ・アップし続けている(たとえば今から10年前に、ビヨンセファーザー・ジョン・ミスティが共作する日が来ると想像する人は少なかったはずだ)。しかし一方的な流出ではなく流入も生じ、「相互作用」が活発になるのが音楽という有機物の面白さ。カテゴリーや既成概念を最初から壊す形で登場した天才的なシンガー・ソングライターであるモーゼス・サムニーはそんな新世代のひとりであり、本セカンドは彼のフュージョニストとしての声明文にしてブレイクスルー作になると思う。

フォーク、ジャズ、ノイズ・ロック、ポップ、エレクトロ、スポークン・ワード他を融合した20曲から成る絵巻的な本アルバムは「黒でも白でもない中間=グレー」という状態をテーマにした現代的なコンセプト作だ。得てして肌の色で分類されがちな音楽ジャンルはもとより、男性と女性の旧的概念、ポップと前衛の間に引かれた境界線、ロマンスともセックスとも割り切れない情感、アフリカン・ディアスポラとしてのアイデンティティ等を通じて二分法から生じる束縛を否定し複雑なグレー・ゾーンを詩的に探る歌詞も素晴らしい。何より、サンダーキャット、ダニエル・ロパティンをはじめとする多彩な顔ぶれと共に構築したこのハイパーに雑種な音楽の美しさとエモーショナルなパワーは、意固地に一辺に偏らず中間にあること=多面性の喜びと可能性を証明している。先行公開されている第1部にじっくり耳を傾けつつ、5月に登場する第2部――こちらは比較的モーゼス本来の持ち味が前面に出ている――での感動的な完結を楽しみにして欲しい。(坂本麻里子)



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ディスク・レビューは『ロッキング・オン』5月号に掲載されました。
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モーゼス・サムニー グレー - 『rockin'on』2020年5月号『rockin'on』2020年5月号
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