UKポップ界のワイルドカード、チャーリーXCX。その通算4枚目である本作は、彼女が新型コロナの影響で外出自粛中だった期間に、ロサンゼルスの自宅から一歩も出ることなく、在宅作業のみで作り上げたアルバムである。しかも、彼女はその制作過程をSNS上で随時オープンに明かし、時にはファンたちの意見を取り入れながらアルバムを完成させた。もともとがMySpace出身アーティストだから(憶えてますか、MySpaceのこと?)、オタク的DIY体質なんだろうけど、にしても、ピンチをチャンスに変えられる人とは、まさにこういうことだ。
家に引きこもりっきりでの作業は、仕事だけなく、人間の感情にも大きな影響を与える。たぶん、そのためだろう――本作には、チャーリーXCX史上もっとも純度の高いラブ・ソングがずらりと収録されている。“セブン・イヤーズ”は彼女の現在の同居人にして、彼氏歴7年のボーイフレンドに捧げた曲だし、“フォーエバー”や80年代風シンセ・バラード“エナミー”もそうだろう。自粛生活中、多くの人がこれまで忙しくて見逃していた人生の大切なものに気づいた。チャーリーにとって、それは愛の再発見だったんだ。
もちろん、これはチャーリーXCXのアルバムだから、自粛中であろうがなかろうが、パーティ・アンセムなしで終わることはできない。その最高傑作である“エンテンムズ”では、パーティ不足な毎日への不満と、未来への希望が綴られる。《私が欲しいものはアンセム/深夜、友人たち、ニューヨーク/いつか、これが本当に終わるときが来たら/私たち、もっと近くに寄り添える仲になれるかも》。すべてが不確かな時代のための在宅パーティ・アルバム。そんな作品、今チャーリーXCX以外に、誰に作れる? (内瀬戸久司)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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