ジェイソン・ムラーズが、通算7枚目となる新作で初のレゲエ・アルバムに挑戦。マティスヤフやトゥーツ&ザ・メイタルズの作品をプロデュースしたマイケル・ゴールドワッサーを迎え、グラミー賞受賞の代表曲“アイム・ユアーズ”でも顕著なレゲエの影響を本格的に追求した上で彼らしい新サウンドを達成した本作は、どんな苦境にあってもあらゆる物事の良い面を見つけ、それらに感謝し、愛と希望を持てば世界は変わるというメッセージを、数々の私的な経験を吐露しながら繰り返し伝えてくる。アルバムのジャケットが虹色の枠の鏡になっているのは、「まず何よりも自分の中の良い所を見つけよう」というメッセージだそう。
デビュー当時から愛と思いやりに満ちた癒しの歌を歌い続け、環境問題や人権問題にも積極的に取り組んできたジェイソンに対し、一体どうすれば彼のように楽観的で懐の深い人間になれるのだろうという疑問を私は抱き続けていたのだが、その答えがこのアルバムに詰まっている。制作が行われたのは1年前で、彼は「こんなにタイムリーなメッセージになるとは思わなかった」と言うが、ストレスや不安や恐れにのみ込まれそうになった時、確実に心と体を癒してくれる一枚だと思う。
またジェイソンは、アルバムのデジタル・リリース日の前日に、「約束や、思いや、祈りを超えて行動する時が訪れた」として、本作の彼の利益の全額をブラック・ライブズ・マター基金を含む複数の慈善団体に寄付すると発表。そしてこの行為を公式に発表することで、音楽業界の人々が同じく行動に出るように影響を与えられることを願っていると語った。様々な意味において、音楽が世界を変えられることを証明するパワフルな名作だ。 (鈴木美穂)
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