ひとり咲きする大樹の根源

ロバート・プラント『ディギング・ディープ:サブテラネア』
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ALBUM
ロバート・プラント ディギング・ディープ:サブテラネア

8度のグラミー賞受賞歴を誇るロック・ボーカリストの最高峰。レッド・ツェッペリン云々というのを抜きにこの人物について紹介するとなれば、そういうことになるのだろう。本作は1982年発表の『11時の肖像』以来、ロバート・プラントがソロ名義で発表してきた全11作の中から選曲された2枚組。ただし、全作品からくまなく選ばれているわけでも、シングル曲が網羅されているわけでもなく、ソロ第3作にあたる『シェイクン・アンド・スタード』(1985年)からは1曲も収録されていないのに対し、第6作『フェイト・オブ・ネイションズ』(1993年)からは5曲も。そうしたばらつき具合からも明らかなように、いわゆるグレイテスト・ヒッツ的性質のアイテムとは一線を画するものだ。

タイトルが意味するのは、アートワークが示すように、地中に隠れている目に見えない部分。彼の姓自体が植物を意味するだけに面白い言葉選びだが、実際、常に自らのルーツを深く掘り下げながら実験を繰り返すようにして歩み続けてきた人物であるわけで、収録内容にもその言葉に相応しい説得力がある。しかも最大で35年もの時間的隔たりがある楽曲たちは時空を超えた魅力に溢れ、その根源を辿ってみたくなるような知識欲と好奇心を刺激せずにおかない。

そんな楽曲群に溶け込んでいる未発表曲3曲も素晴らしく、ことに“チャーリー・パットン・ハイウェイ”には、かつてジョニー・キャッシュが発表した名作カバー集にも通ずるディープな味わいがあるし、パティ・グリフィンとの艶っぽいデュエット曲も必聴。ここにアリソン・クラウスとのコラボ曲なども含まれていたならいっそう濃厚なものになった気もするが、それは欲張りすぎというものだろう。お見事です、巨匠。 (増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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ロバート・プラント ディギング・ディープ:サブテラネア - 『rockin'on』2020年10月号『rockin'on』2020年10月号
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