「逃避のロック」から王道へ

ナッシング・バット・シーヴス『モラル・パニック』
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ALBUM
ナッシング・バット・シーヴス モラル・パニック

一見ミューズに代表されるUKエピック・ロックの系譜の継承者のようでいて、実はどこまでも無国籍かつアナーキーなロック愉快犯であること自体を存在証明とするような唯一無二の異才バンド=ナッシング・バット・シーヴス。ロックを「現実の重力からの解放と逃避」と位置付けるのであれば、2020年の現在において彼ら以上にロックなバンドは存在しないとさえ言える。前作2nd『ブロークン・マシーン』制作時には自らのアドレナリン暴走気味の音楽アナーキズムがコナー・メイソン(Vo)自身を追い詰め解散の危機にまで陥ったNBTだが、3作目となる今作『モラル・パニック』では、そんな自分たちの在り方すらも全身で謳歌しながら圧巻のダイナミズムを発揮しているのが印象的だ。

前作同様にマイク・クロッシー(アークティック・モンキーズThe 1975など)をプロデューサーに迎えた今作。アット・ザ・ドライヴ・インビースティ・ボーイズが高圧の中でカットアップされたような“アンパーソン”をはじめ、ハイブリッドな質感のシャッフル・ビートが聴く者すべてを「永遠の近未来」の風景へ誘うリード曲“イズ・エヴリバディ・ゴーイング・クレイジー?”、異次元転生したU2の如き壮大なナンバー“リアル・ラヴ・ソング”……といった具合に、一瞬先には未知の領域へ飛ばされるようなスリルと快感が随所にちりばめられている。それでも、常時遠心分離レベルの高速でドライブし続ける音楽世界が空中分解も破綻もせずにその珠玉のバランスを構成し得ているのは他でもない、その中心に立つコナーの歌の存在感ゆえだろう。時に美しいファルセットで虚空を妖しく彩り、時に華麗な絶唱で景色を震わせる――。逃避の果てに破格の王道を予感させる快盤。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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ナッシング・バット・シーヴス モラル・パニック - 『rockin'on』2020年11月号『rockin'on』2020年11月号
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