時代と呼応するメタモルフォーゼ

ヤー・ヤー・ヤーズ『イッツ・ブリッツ!』
2009年04月15日発売
ALBUM
ヤー・ヤー・ヤーズ イッツ・ブリッツ!
いうまでもなくヤー・ヤー・ヤーズのサウンド・フォーマットが定型化したことなどいままで一度もないのであって、サウンド面において『フィーヴァー・トゥ・テル』と『ショウ・ユア・ボーンズ』のあいだで起きた変化と『〜ボーンズ』と本作のあいだで起きた変化に、本質的な違いがあるわけではない。少なくともバンド自身にとっては。ただし、『〜ボーンズ』が期せずして00年代第一世代の最初の転換期を象徴していたように、本作もまた、期せずして時代に寄り添ってしまっている。

ヤー・ヤー・ヤーズが常に歌ってきたのは、現代の都市に生きる孤独についてである。カレンはこのアルバムでも「死ぬまで踊れ」と歌い、「フロアにはすべての運命が」と歌い、「寂しくて振り返らずにはいられなかった」、「私の名前を愛して」、「愛よ、泣かないで」と歌っている。そこにある孤独は“マップス”で「私があなたを愛しているようには、みんなあなたを愛してはいない」と歌われたものと根本を同じくするものではあるが、ビンテージ・シンセサイザーの夢見のような音が聴こえてくるぶん、そのコントラストは強調されている。ダンスフロアの享楽の裏側には常に孤独がある。ここ数年の音楽はことさらそれに目を瞑ってきた。ちょうどヤー・ヤー・ヤーズが破天荒で過剰なステージ・パフォーマンスでイメージを演出してきたようにだ。しかしその欺瞞も暴かれようとしている。というか、このアルバムはそれをすでに暴いてしまっているような気がする。だから、あまりにも切ないのだ。(小川智宏)
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