オリジナルフルアルバムとしては、実に3年5ヶ月ぶり。その間、mabanuaを迎えて制作した二部作『green』『red』、先行シングル群などで、どんどん音楽性の幅を自由に広げていっていた
藤原さくらの集大成と言える傑作が誕生した。ラッパー/トラックメイカーのVaVaが手がけた“生活”、冨田恵一プロデュースの“コンクール”、
SPECIAL OTHERSの柳下 "DAYO" 武史と宮原 "TOYIN" 良太がアレンジを担当した“BPM”、再びmabanuaとタッグを組んだ“Right and light”――と、一部を紹介しただけでもわかる個性的なアーティストとの共作で生まれた多彩な音像で、まず耳の幸せ度数がすごい。そしてもちろん、その音像に負けていないどころか、すべてを心地よく乗りこなしている藤原さくらの歌が素晴らしい。これまでは年齢よりも少し大人びた印象だったけれど、今や24歳の彼女がすっかりルーツミュージックを消化し、等身大で新しい音楽を楽しんでいるのが伝わってくる。ナチュラルな生活感に、女性らしいけだるさと少女のコケティッシュさが混ざり合った歌詞にもドキッとする。(後藤寛子)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年12月号より