そうか『インソムニアック』も25周年か(このところこんなため息ばっかりな気がする)。ついこの間大騒ぎしていた気がするこの名盤も発売25周年、アメリカでは25歳であればどの州でも成年扱いで、レンタカーも借りられ、酒類の購入が可能、養親となることもできる。一人前の大人になった『インソムニアック』を祝うというのでアルバムをリマスター、ボーナス・トラックを加えた”アニヴァーサリー・エディション”のアナログをリリースすることにした。
気になるボーナス・トラックは96年の〈インソムニアック・ワールド・ツアー〉、3月26日プラハ公演から8曲のライブ・トラック。まだまだライブもガンガンと勢いだけで突っ走る頃で、今のような余裕綽々というのとは違った一個一個の音から熱が噴き出すかのようなライブが楽しめる。
『インソムニアック』はグリーン・デイの通算4枚目、メジャー移籍第2弾となるもので、前作『ドゥーキー』で一気に人気が爆発、グランジからの流れとも重なりながらパンク熱をポピュラーなものへと加速させていきアルバム・チャートで2位、シングル、“ギークはパンク・ロッカー”はメインストリーム・ロック・チャートで9位、“ブレイン・シチュー”同8位と、数年前まで西海岸のライブハウスで鬱々とした状況で活動してきたことを考えると嘘のような快進撃を見せた。
〈不眠症〉というアルバム・タイトルに示されているようにロック・スターとして拡大する人気とパンクスならではのスタンス、メンバー間のエゴ、そうしたさまざまな問題に正面から向かい合い、突破しようとする決意が演奏にはあるし、楽曲もパンクの姿勢を崩すことなく、それだけで満足することのないスケール感を持ち出し、後年の『アメリカン・イディオット』や『21世紀のブレイクダウン』で確立する世界を予感させるところもある。
そして嬉しいボーナスのライブ・パートは“アルマタージュ・シャンクス”に始まり”86”まで、『インソムニアック』の曲を8つ、基本的にはアルバムと同順に収録している。確かに実際のライブも同曲のオープニング、そしてアンコールのラスト・ナンバーなのでダイジェストとしてはうまくまとまっているのだが、どうせだったらライブ・ステージ全編を入れてくれたほうが良かった(データだと、この日は20曲演奏したようだ)。
この2ヶ月前には待望の初来日も果たし、ファンの大歓迎を受けていたが、そんな歴史もすべてのみ込むようなアニヴァーサリー・エディション、やはり感慨深い。(大鷹俊一)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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