音の騎士、「その先」へ立つ

TOTO『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』
発売中
ALBUM
TOTO ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ

昨年11月のオンライン・ライブをもって無期限活動休止期間に終止符を打ち、新ラインナップで再始動を果たしたTOTO

「デヴィッド・ペイチと俺はジェフ・ポーカロの未亡人とマイク・ポーカロの未亡人とのえげつない裁判に巻き込まれてしまった」(スティーヴ・ルカサー)ことによる傷心の活動休止を経て、ルークとジョセフ・ウィリアムスによる各ソロ・アルバムのジョイント・ツアー敢行――の話が一転、デヴィッド・ペイチの「このバンドをTOTOと呼べばいい」の言葉に背中を押される形でTOTO再開、というドラマチックな展開を可能にしたのは取りも直さず、オリジナル・メンバーにして唯一全ライブ&全作品に参加しているルークの存在感に他ならない。

歴代メンバーの音楽的DNAを継承してきたTOTOにおいて、バンドという生命体の軸を体現してきたルークの存在感を、活動再開時のオンライン・ライブを収録した今作は改めて伝えてくれる。

ルーク&ウィリアムスと今回ゲスト参加のペイチ、さらにジョン・ピアース(B)、ロバート・“スパット”・シーライト(Dr)、ドミニク・“エグゼヴィア”・タプリン(Key)、ウォーレン・ハム(ホーン/Perc)、スティーヴ・マッジョーラ(Key)といった辣腕プレイヤーを迎えて行われたこの日のステージ。充実感に満ちた表情で“ホールド・ザ・ライン”や“パメラ”、“ロザーナ”など各年代の名曲を歌い奏でるそのアンサンブルが、極上のエンターテインメントとして以上に、その目映い一音一音に居合抜きの如き凄味を宿した生き様のドキュメントとして胸に響いてくる。

コロナ禍の影響で復活ツアーの日程はすべて2022年に延期されることとなったが、栄光の歴史の「その先」を確かに感じさせる作品であることは間違いない。(高橋智樹)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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TOTO ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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