真打ちの凄み

ミーゴス『カルチャーⅢ』
発売中
ALBUM
ミーゴス カルチャーⅢ

3rdアルバム『Culture Ⅱ』収録曲のBillboard Hot 100で同時にランクインした楽曲数がビートルズに並び、かねてからドナルド・グローヴァーが表していた「現代のビートルズ」という言葉が実証されてから3年半。クエイヴォ、オフセット、テイクオフ、それぞれが他アーティストの楽曲に参加する等し、存在感を濃くしながらも、母体・ミーゴスの新作が待ち侘びられていたが、ついにCultureシリーズの最終作『Culture Ⅲ』がリリースされた。

1曲目の“Avalanche”は、「フッ」という軽やかな掛け声のような音から始まる余裕ぶり。艶やかなトランペットがフィーチャーされたファットなトラップで、軽快だがありありと貫禄が滲む。これまでをあっさりと更新し、さながら真打ち登場といった感。ドレイクを招いた“Having Our Way”は、多層的なレイヤーがかかったトラックが弧を描くようにループしていく中でフックとなる不穏なボイス・サンプリングがいくつも入りつつ、4人のラップの掛け合いがぐるぐると渦を巻く様が見事だ。

ジャスティン・ビーバーのハイトーンのボーカルが胸を打つ、切ない駆け引きを歌う“What You See”や美しいハーモニーとメロディを聴かせるメランコリックな歌もの“Time For Me”といったメロウなメロディ路線の曲が存在感を放つ。

それに加え、前作はファンキーで強烈なチャームのあるアップテンポの楽曲が並び、ルックスも相まってミーゴスをポップ・アイコンに押し上げたわけだが、今作は多様な音が溢れながらも、派手というよりは、ビートに馴染ませたようなアプローチも多い。その上で惚れ惚れするような阿吽の呼吸で絡み合う華のあるラップはミーゴスならでは。まさに名人芸だ。(小松香里)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

ミーゴス カルチャーⅢ - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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