いまやロバート・フリップの話題といえば毎日曜日配信の『Toyah & Robert's Sunday Lunch』ばかりで(サウンドスケープの『Music for Quiet Moments』もあるが)、それはそれで充分楽しいものの、やはりきちんとした音を、との思いは強かった。そんな期待に応えたのが、90年代から交流するエレクトロ・デュオ、ザ・グリッドとの本『リヴァイアサン』だ。
ザ・グリッドはデイヴ・ボールのユニットで、彼はマーク・アーモンドとのソフト・セルでヒットを飛ばしつつスロッビング・グリッスル周辺の尖った人々とも先鋭的な仕掛けを行っていたが、そんな流れのひとつがロバートとのつながりで、ザ・グリッドのセカンド『Four Five Six』(92)でのプレイは、特筆ものだった。
それ以後にも作品参加があったりはしたものの、キング・クリムゾンとしての大展開を迎えたこともあって距離は空いてたのだが、このコロナ禍が互いを引き寄せた。デイヴの誘いにロバートは「トラック一杯のアンプとエフェクトを持って現れて(中略)、演奏しまくったよ」とのことで、たしかに1曲目の夜明けの光景を描き出すかのような“エンパイアー”に始まり、まるでウェールズの森を進むようなしっとりとした情感が伝わる“ミルクウッド”と深い信頼関係を思わせる音が連なっていく。
デイヴは今回80年代アナログ・シンセの象徴、プロフェット5を駆使し、どこか懐かしい音色を響かせロバートのサウンドスケープとの相性も文句なし。意外なほどポップな奥行きを備えたトラックが潜んでいたりする。
ソフト・セル20年ぶりの新作アルバム・リリースなんてニュースも飛び交っているし、ロバートの意欲的なプレイを聴いていると、いよいよ何かが動き出すかも、なんて思いが膨らむコラボだ。(大鷹俊一)
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