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RADWIMPS feat.菅田将暉『うたかた歌』
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RADWIMPS feat.菅田将暉 うたかた歌
松竹映画100周年記念作品として公開されている『キネマの神様』。博打好きのダメ親父が映画製作に情熱を注いでいた青春を振り返るところから始まる物語で、沢田研二(現代)と菅田将暉(青年期)がダブル主演。現代の主人公は、本来であれば志村けんが演じる予定であった。また、若き日の主人公の盟友役にキャスティングされたのがRADWIMPS野田洋次郎なのだが、そもそもこの“うたかた歌”は、主題歌として制作された楽曲ではなかったという。素朴でフォーキーな曲調は、野田が映画に寄せる作為のない率直な思いから生まれたと言えるだろう。くるくるとスイッチするボーカルは青年期を演じたふたりが歌っているのに、歌詞の中の主人公は多くの経験を潜り抜けて年齢を重ねた人物になっている。記憶を旅する人の心が、時空をぐにゃりと捻じ曲げてしまうかのようだ。楽曲の根幹部分は素朴なのに、RADWIMPSによる巧みなサウンドスケープがその不思議な手応えを演出している。シンガー・菅田将暉が楽曲に没入する力も相変わらず素晴らしく、志村けんへの気配を織り込んだ終盤の歌詞は感涙必至だ。(小池宏和)

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