痛む、優しさが響く

Hakubi『era』
発売中
ALBUM
Hakubi era
「era」とは「時代」という意味の言葉だが、この名を冠したHakubiのメジャーデビューアルバムは、決して仰々しいものではない。むしろ、この「era(時代)」という言葉の細部にある、人間一人ひとりの生を照らすような、繊細な歌心に満ちたアルバムである。時代があるから人がいるのではなく、「個」として人がいるから、時代がある――そういう誠実な眼差しを感じさせる楽曲が並んでいる。

この眼差しを生んでいるのは、孤独だろう。アレンジの幅は広く多彩な楽曲が並ぶが、どの曲も片桐(Vo・G)による詞と歌を遠くへ導くために作られているのではないか。そのくらい彼女の歌は存在感があり、同時に孤独だ。独白のように、日記のように、投函されない手紙のように、終わらない自問自答のように、怒号のように、悲鳴のように、祈りのように。音楽の中で言葉は時に滴のように零れ、時に過剰に繰り返される。無かったことにされてしまいそうで、でも絶対に無かったことにできない人の心の動きが、痛切ですらある筆致で綴られている。この痛みを、優しさとして受け止める人は多いのではないだろうか。(天野史彬)

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