10-FEETのTAKUMAが卓真名義で映画主題歌に楽曲を書き下ろしたというニュースが駆け巡ったのは9月のこと。柳内大樹による漫画の実写映画化『軍艦少年』テーマ曲が、シングルとしてリリースされた。バンドのボーカリストが、ソロシンガーとしての道に踏み出すには、どのような理由があるだろう。バンドが解散した時？ それまでのバンドとは異なる表現のアイデアが膨らんだ時？ それはつまり、新しい自分に気づき、新しい音楽の風景が見えてしまった時なのではないか。スローなフォークロックのバンドアレンジによって描かれた“軍艦少年”は、タイトルごと原作と映画に踏み込んだ楽曲であるにもかかわらず、まさに卓真というひとりのシンガーソングライターのディープな独白のように響いてくる。10-FEETでもフォーキーなメロディを歌うことはあったし、本作では発声や発語がより明瞭で優しいものになっているのだが、そういった表層的な変化以上に、卓真という個性がそこにドンと鎮座している。カップリングの“アゲハ”でも、個性がまったく揺るぎないものであることが伝わると思う。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』1月号より