このバンドの音の熱量の根底にいつでも漂っている牧歌的なムードをピアノで効果的に彩りながら届けてくれる“青いの。”。終わった恋の残り香を噛み締めているさまを《赤い糸》《青い春》という2色のコントラストで描写しているのが印象的だ。全体的に現実をあるがままに受け止めていて、前向きになろうとしている様子なのに、エンディング間際でいきなり抑えきれない本心が飛び出すのが実にいい。《SOS 本当に痛い》という一節が連呼されるごとに切なさが急速に募るこの感じは、クールな自分でいたいといくら願っても、そううまくいくはずもないリアルな青春像そのものだ。そして、ギターの柳沢が作詞作曲を手掛けたカップリングの“T R A P !”は、起伏に富んだ曲展開と4人それぞれの歌声で楽しませてくれる。CDに収録されているメンバー各々のセレクトによる昨年の横浜アリーナ公演の音源にも表れているが、心底楽しそうに音を奏で合うさまもバニラズの魅力なのだと再確認できる曲だ。先述の牧歌性は、サウンドが醸し出しているだけではなく、こういう4人のムードにも根差しているのだと思う。(田中大)
青春は意外と苦くて超激辛
go!go!vanillas『青いの。』
発売中
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SINGLE