ルーツとモダンをナチュラルに同時表現する天性のリズム感覚と、耳の奥深くへと流れこむような唯一無二の質感を持つ歌声。その魅力がさらに深まった、中毒性の高い5thアルバム『neon』が完成した。コロナ禍で、心の置き所や感情のコントロールを失いそうな日々が続く昨今。そんな先の見えなさや不安にシンクロするような“はずでした”でアルバムは始まり、切実に光を求めるような“渦(neon)”へと続く。そんな不穏で内省的な(けれど抗いがたい)空気が5曲目の“目覚め”でポジティブな浮遊感へと変わる。その希望の端緒は“はじまりの日”へと引き継がれ、iriの歌がビビッドに躍動していく――そんな有機的な物語が自然に描き出されていくような素晴らしいアルバム。後半、弾き語りで始まる“baton”は、シンガーソングライターとしての原点も感じさせ、ストリングスを交えたアンサンブルが、歌声のやわらかさと深みを際立たせる。そしてラストの“The game”では、iriの歌がリズムそのもののように力強く響いて、思いがけない解放感を味わう。いや、やはりこの歌声とリズムはすごい。(杉浦美恵)
歌声そのものが躍動するリズム
iri『neon』
発売中
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ALBUM