すくい上げられる「声」

Chilli Beans.『Chilli Beans.』
発売中
ALBUM
Chilli Beans. Chilli Beans.
今思えば、既発のEP2作にはメロウなムードが通底していたが、ここに届けられた1stフルアルバムは冒頭からアップリフティングなエネルギーに満ちた作品だ。《このまま/いい子やめちゃっていんじゃない?》――そんなふうに歌う1曲目“School”は、ポップでクールな「私の人生」革命宣言。君は君の正しさを他人にわかってもらう必要はない。君の天国も君の地獄も、君にしか生きられない。ならばすべてのまやかしを打ち破って、行け――そんなメッセージが響いている。

The 1975スーパーオーガニズムビーバドゥービーなどが更新してきたポップの形を昇華しつつも、チリビの3人はそれぞれがシンガーソングライターとして出会ったバンドの根源を手放さない。ゆえに彼女たちはスタイルに翻弄されず、自らが歌うべき歌を眼差すことができる。たとえばポストパンク風の鋭利なバンドサウンドが映える“blue berry”。この曲に響く「声」は、ネットニュースにも音楽雑誌にも載らない、今にも消えてしまうかもしれない、彼女たちが今歌にしてすくい上げなければならなかった誰かの透明な叫びだ。(天野史彬)

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