鳴り響いている音は力強いのに、聴いていると胸の内で広がる「ほっとする」というこの感覚の正体はなんなのか? 時々考えていたHump Backに関する謎の理由が、今作を聴いて少しわかった気がする。彼女たちの音楽には、一貫しておおらかさがあるのだと思う。どれだけ現実が非情だとしても、ただひたすらに怒りまくって絶望し続けるのは結構しんどい。適度に怒りや絶望を面白く表現したり、時には頭を空っぽにしてみたりもすることが、困難と向き合い続けるための有効な闘い方なのだと思う。このEPに並んでいる曲たちは、そういうことを感じさせてくれる。理不尽な世の中に対する抵抗として、「生き続ける」ということを提案してくれる“僕らの時代”や“がらくた讃歌”もそうだが、冴えないことばかりの日常を少しは肯定できる視点が、あらゆる曲にちりばめられているのが嬉しい。友達が大事だったり、ご飯が美味しかったり、猫が可愛かったりする瞬間が時折あるだけでも、意外と人はそこそこ元気でいられる。そういうことを実感させてくれるのが、Hump Backの音楽のかけがえのない魅力だ。(田中大)
興奮と安らぎのあわせ技
Hump Back『AGE OF LOVE』
発売中
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EP