My Hair is Bad史上初、アリーナで360°ステージに挑戦した「ダイナマイトホームランツアー」。そのファイナルの3月26日に行われた、国立代々木競技場第一体育館の模様を収めた映像作品。彼らが恋愛を歌うのは、触れられるリアルをはみ出して嘘や虚飾を歌いたくないから。そして、半径2mの世界が、地球の果てまで繋がっているのを知っているから。――そんなことを、巨大なアリーナで、目の前で呼びかけるような言葉と、隣で鳴らしているような演奏を、普段着で繰り出す様子を観ながら、改めて思った。序盤の緊張も、中盤以降の興奮も、美しさも醜さも、下手したら誤解されかねないほど正直に剥き出しにする、彼らのライブならではのパフォーマンス。それ故に崩れ落ちそうな危うさを感じたこともあったけれど、今や彼らは、たくさんの熱視線に囲まれながら、堂々と立っている。アンコールも含めて全25曲、いろんなことを諦めそうになる今の時代において、ハッと目を見開かされる瞬間が次々と訪れた。ピュアなままで進化した軌跡。これから、ますます奇跡を見せてくれそうな予感がする。（高橋美穂）

『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より