妖しい世界の扉を開くダンス

夜の本気ダンス『armadillo』
発売中
MINI ALBUM
夜の本気ダンス armadillo
このバンドが奏でるサウンドを聴くと踊りたくて堪らなくなるのは確かなのだが、心の中がざわつく感覚にもなるのがいつも面白い。たとえば今作の収録曲のひとつ“STARLET”は爽やかな曲として聴こえる面もあるものの、大音量で浴びているうちに不思議と胸中で募っていくのは「やるせない」とでも表現したくなるホロ苦い感覚だ。トランス状態を誘う展開を何度も重ねる“審美眼”も、根底にはなんとも言えない切なさが脈打っている。これらの曲に共通するのは、非情な現実が突きつけてくる悲しみを無我夢中で踊る楽しさで打ち砕こうとしている狂おしい姿だ。追い詰められた心をダンスの快感によって懸命に蘇らせようとする切実さが、彼らの様々な曲に宿っているのを感じる。

00年代辺りのロックンロールリバイバルの骨太さ、ジョイ・ディヴィジョンに通ずる殺気も漂わせる彼らの音楽は、毒気の成分もかなり多い。開放感や明るさのイメージと結びつきやすい「ダンス」だが、その真逆の性質をかなり帯びているこの独特な作風は、ぜひ実際に聴いて確認してほしい。(田中大)

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