傑作である。KAAT神奈川芸術劇場での8日連続公演にてプリプロを実施し、バンドメンバーのみならずオーディエンスとの共鳴・共振も含んで制作をスタート。“MIRAI”ではつくばみらい市民計200人+8匹分のテイクの合唱や伊奈高校吹奏楽部の演奏が鳴る。そして1曲目“月に吠える”には中村佳穂が参加。ROTH BART BARONの三船雅也がたくさんの人を信じながら生み出したこのアルバムには、コロナ禍で失ってしまった人と人の身体が触れ合った時の心の震動の美しさが封じ込められている。それこそがアルバムに通底するテーマであり、音の表現と言葉の意味性が掛け合わさることでそれぞれを広げる役目を果たしていることも三船のソングライターとしての凄味だと思う。世の中を見渡せば人間に絶望することだらけだ。しかし三船は人間の心理を、人と人の繋がりを、どうにか讃えようと真摯に音と言葉を紡いでくれる。僕とあなたを歌っているのに想像が世界へと広がっていくのは、自分の生活とあらゆる社会問題は地続きにあることを知る三船の心から湧き上がる音と言葉が鳴っているからこそ。(矢島由佳子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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