混じりけのないバンドサウンドに乗せて、夜中にひとりで綴る日記のような、はたまた、女子会でのくっちゃべりのような、何はともあれ、どうしようもなく「歌」でしかない歌たちが響いている。恋も、喪失も、怒りも、眠れない夜も、お守りのような決意も、この大阪を拠点にする3ピースバンドは歌にする。曲を作った時の年齢をそのままタイトルに掲げたと思しき“26”で、《涙を死ぬ程流して歌うのです/この歌が決して嘘だと思われようが/涙を枯らすまで歌うのです》――こう歌っているように。
演技がかった情念でも、取ってつけたメッセージでもない、「私」が「私」として生きることの現実と祈りが真っ直ぐに響いているアルバムである。「何を鳴らせばいい?」「何を聴けばいい?」「どうやって進めばいい?」――あらゆる問いが重くのしかかるこの時代にあって、カネヨリマサルは《とりあえずでいいよね/今日のわたしだけ生きてたい》(“ゲームオーバー”)と歌う。この「今」を生き抜く意思が逃避でも先延ばしでもないことは、その瑞々しい輝きを放つアンサンブルが証明している。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より)
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「私」であることの現実と祈り
カネヨリマサル『わたしのノクターン』
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