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思えばアルバム『our hope』以降の“生活”“永遠のブルー”“FOOL”、どの曲でも「言葉」への逡巡が綴られていた。《彼が言った言葉 何度も思い返して/上手く返事できたか?グルグルグルする》という歌い出しの新曲“more than words”もまたディスコミュニケーションがテーマになっているけれど、その迷いの行き着く先はいたってシンプル。軽やかなビートに乗せてhihiA♭のファルセットで突き刺すのは《just be by your side》、「ただ側にいたいだけ」という想いだ。頭をよぎるのは今夏のROCK IN JAPAN、クロージングアクトでの、その日の熱を静かにとかしてゆくようなパフォーマンス。優しく語りかけるかのごとく親密なアンサンブルに、全身が包み込まれる感覚だった。シューゲイズに合わせ《踊り出せミュージックは止まらない》《give you more than words》と歌うアウトロは、コミュニケーションに対する塩塚モエカのひとつの答えでもあり、羊文学が私たちのすぐ側で鳴らしてくれる愛に溢れた音の結晶でもある。(畑雄介)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年11月号より抜粋)
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