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この2年半ぶりのフルアルバムについて、レーベル資料の中で川谷絵音(Vo・G)は「indigo la Endというバンドの音をこれでもかというくらい“バンドのありのまま”の状態で収録しています」と綴っている。確かに本作に収録された15曲を通じて感じるのは、バンドのアンサンブルの妙、研ぎ澄まされた音色の妙である。裏を返せば、「ありのまま」の状態でこれほど多彩な情景を生み出してしまえるのだから、改めて、indigo la Endというバンドの表現力のすさまじさを感じる。鮮やかな音の重なり、微細なグラデーション、大胆な変化。それらを生み出す、しなやかな筋肉の動き。こうしてバンドが「バンド」という表現形態の制約と可能性に向き合うことと、そこに乗る歌詞が人の「哀愁」を綴ろうとすることは無関係ではないだろう。どちらもが「人間」に向き合っているのだから。「この筆で描ける哀しみはまだある」と言わんばかりに、彼らは音と言葉によって人間を、その愚かしさと美しさと未知を浮かび上がらせていく。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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