かつて「俺がアメリカについて誇れることといったら、アメリカがマリリン・マンソンというアーティストを生んだってことぐらいだな」と語ったマリリン・マンソンが、米大統領がジョージ・W・ブッシュからバラク・オバマに交代してからちょうど2ヶ月後に新曲“ウィ・アー・フロム・アメリカ”(M12)をリリースした。愛国心に沸くアメリカに共鳴するタイトルのこの曲中で、彼は“胎児を殺したくはない/彼らを育てて、俺達の戦争で使ってやりたいから/俺達はアメリカ人だ/子供を喰らう国の人間なんだ”と歌う。「ブッシュは関係ない。アメリカはいつまでもアメリカで、いつまでも悪なのだ」という現実を突きつけ、お上品で知的なインディ・ミュージシャンやオバマの敬虔な支援者であるビッグ・ネームのミュージシャン達を一笑に付し、ついでにハナクソまでなすり付けてやった観さえあるダークな信念が漲っている。
約10年ぶりとなるトゥイギー・ラミレスの復帰も話題となった今作。美メロと凶暴性を絡め合うサウンドを奏でる中、彼は相変わらず政治・宗教を嬲りつつ、同時に前作『イート・ミー〜』的に自身をも内側から抉り返す。前作で一度葬られたモンスターが再び赤子として蘇ったかのような“瑞々しい恐怖”を湛えるマンソンは、「大統領が代わろうと、自分の、そして世界の悪夢は終わらない。そして俺が存在すべき理由は永遠になくならない」と、お祭り気分の空気をブチ壊してでも訴えてくる。流石、である。結局のところ、誰よりも下品で凶暴でエログロな生き物は、相変わらず誰よりも賢く、現実的で、正しいのだ。(上田南)