逆さまの天国に響く絶唱

マリリン・マンソン『ヘヴン・アップサイド・ダウン』
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マリリン・マンソン ヘヴン・アップサイド・ダウン
前作『ザ・ペイル・エンペラー』で見せたブルース・ロック・シンガー的な佇まいから一転、10枚目となる今作ではそれこそ『アンチクライスト・スーパースター』『メカニカル・アニマルズ』を彷彿とさせる―聴く者の精神を固定概念の破片の上で引きずり回すような暴力性に満ちたインダストリアルなサウンドを轟かせているマリリン・マンソン。

ヨハネの黙示録12章をモチーフに、「我々は子供たちの血で街を赤く染める」という凄絶な風景を展開する“Revelation #12”しかり、斬首されたトランプを模したと思しき“SAY10”のMV(削除済み)しかり、“KILL4ME”“JE$U$ CRI$IS”といったキレキレのアジテーション精神あふれる楽曲タイトル群しかり、アメリカと世界の現状に対する危機感によって、再びマリリン・マンソンという表現がゴシック・ロックのバトルフィールドへと駆り立てられたことを明快に物語っている。

異形のアイコンとして世界レベルの存在感を確立してから20年以上、プライベートの凸凹もすべてなぎ倒し、矛盾と欺瞞の告発にこそ改めて己のアイデンティティを見出したことが窺える怪盤。(高橋智樹)
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