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“lemonade”をフックに2020年代のポップミュージックシーンにおけるアイコン的な存在としてブレイクしたChilli Beans.だが、自由に音楽をプレイ(遊び尽くす)する姿勢は今作でもブレないどころか拍車がかかっている。冒頭の“Intro”からして魔城に迷い込んだかのような趣で遊び心満載。さらに今作は彼女たちの内省的でダークな側面さえもポップに昇華する手腕が見事発揮されていて、堂々の全編日本語ラップでけだるい感情を蹴散らす“My life is saikooo”、《誰も救えないこのdark》とダウナーな思考から抜け出せずにもがく“doll”、カオティックな世界観に酔いしれる“105☻”では、ラスサビのリフレインに哀愁と喜悦が同時にこみ上げてくる。既発曲“Raise”やアルバムを象徴する“Welcome”といった開けた楽曲の存在感も強烈で、ダークもダーティもドリーミーもラップもチルもすべてがポップスへとなだれ込むのはもはや彼女たちの本能が成せる業。すでにソールドとなった武道館公演を前に、完全無欠の牙城を築くことに成功した1枚だ。(橋本創)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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