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終わった恋の記憶と、残り続ける未練や愛憎がないまぜの感情を、《こびりついた記憶の味がしなくなるまで》噛み締め続けたガムに喩える三原康司の筆致が冴える新曲“ペパーミントガム”。CMソングとしても放送中の“スパークルダンサー”がフレデリックのパブリックイメージ中央を貫くものならば、こちらは外殻を拡大するタイプだ。あらゆる角度から「踊らせる」ことへトライし続けてきたバンドの奥深さを堪能できる曲として、見事に刷新されている。ごくタイトで必要最小限な音使いで、熱く踊らせるよりもクールに揺らしていくアプローチは彼らのアコースティック編成「FAB!!」の系譜。シンセなど上物の使い方や反響のON/OFF、ラスサビ前でにわかに生々しさを増す瞬間など細部までこだわりぬいたアレンジは、再生するたび発見がある。三原健司の声に宿るメランコリーと巧みに韻を踏むリリックの絡みも中毒性高し。味のしなくなったガムを題材に、噛めば噛むほど味が出る曲を書くなんて、お洒落がすぎる。(風間大洋)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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