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生きろ。と、伝えたがっている音楽である。《この歌と小指を結んで/あなたは明日も生きていくんだ/約束だよ》と歌われる“私が明日死ぬなら”に始まり、《君のその苦しみはずっとあるよ/大人になっても》と歌う“大人になっても”で締め括られるこのアルバムには、己の身に巣食ってしまった「青さ」を誠実に抱え続けながら、生きることの受難に向き合い続ける作り手の、その人生を賭して引っ掴んだメッセージが深く刻まれている。同じように、終わることのない青の時代を生きる者に向けて、この音楽は奏でられている。きっと、5年後や10年後の日本の音楽シーンは「キタニタツヤに影響を受けて音楽を始めた」という才能で今以上に溢れ返っていることだろう。多面的な活動から感じる強烈なバイタリティと、クラフトマンシップ、そして、自らを語り、聴き手の感情や精神に絶対的に触れようとする表現としての野性味。キタニのその説得力は、紅白出場を果たし、満を持して放たれるこのアルバムにも強く刻まれている。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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